第11章 帰宅後
『本物の王子様、現れたな。』
社長は、電話に出て開口一番にこう言った。
しかも、至極楽しそうに。
まぁ、この業界では当たり前なのだろうけど、社長はすでにネットに流れている記事を知っているようだ。
「社長、なんでそんなに嬉しそうなんですか?」
普通、自分の事務所に所属しているタレントのスキャンダルなんか、嫌がるものだと思う。
若干呆れた声が出た。
『俺の目に狂いは無かったって事だべ?王子様に見初められたっつーの、マジでシンデレラじゃね?』
「…社長、なんでそんなに呑気なんですか?向こうの事務所から何か連絡とか無いんですか?その、イメージを傷付けた損害賠償の話とか…。」
事務所同士の争いになれば、1年シンデレラ企画以外に大きな仕事がないうちの事務所は負ける。
あっちは、事務所の名前だけでも知る人ぞ知る、大手だから。
それなのに、なんで。
『出ちまったもんは、しゃーねーべ?お陰でお前の顔も有名になったんじゃね?悪い方ばっか考えんの、面白くねぇじゃん。
ま、何かあったら、うちのタレント護るのは、こっちの仕事だしー?お前は、企画成功させんのが仕事な?ソコ、分かっとけー。』
社長は、社長らしい所なんか無いと思っていた。
でも、たった1つの企画だけで芸能界に残る事が出来ているのは…。
トラブルでさえも、プラスに考えようとする。
彼の、社長としての力なのだと知った。