第11章 帰宅後
社長が、社長として、自分が抱えるタレントである私を護ってくれるなら。
私は、その期待に応えて、ワンデレラとして、地味な姿を変える。
絶世の美女は無理でも、今年の企画も大成功だと言われるように。
それが、この人の遊びに付き合うって事だ。
「社長、有難う御座います。」
『礼なら、変わったお前に一番最初に手ェ付けさしてくれりゃーいーぜ。』
「自分のトコのタレントに手を出す気ですか?」
『シンデレラ企画が終わったら、ウチのタレントじゃねぇし?』
「その頃には、社長なんか手も届かない女になってみせますよ。」
ふざけたような会話の最後に、口から出した言葉は誓い。
絶対に、そうなってやる、って想い。
『おー。楽しみにしといてやろーじゃん。
じゃ、そろそろ寝ろよ?夜更かしは肌の大敵だろ?地味女が、肌まで汚かったら救いようねーからな。お休み。』
最後まで、楽しそうに喋り電話が切られた。
社長と話して安心出来たから、吹っ飛んでいた眠気が戻ってくる。
化粧だけ落としたら、すぐに寝ようと思ったけど、肌を荒らす訳にはいかない。
ボロついた肌で人前に出たら、恥をかくのは私だけじゃないから。
面倒な日は、今までやっていなかった寝る前の顔の手入れ。
今日からは、しっかりやって寝る事にしようと決めた。