第11章 帰宅後
静かな部屋の中でテーブルを挟んで座る。
どちらも何も言わないまま、数分が経過した。
「…あの、月島さん。」
「…何?」
それはこっちの台詞です。
用事があって来たんじゃないの?
時間は経てど話をする様子は無い。
「用がないなら、帰って頂けますか?」
「用事は、あるよ。」
「じゃあ、ご用件を。」
眠気があって、早く終わらせたい。
つい、口調が強くなってしまった。
月島さんは、イラッとしたようで眉間に皺を作る。
やっと、動いてくれたと思ったらスマホを触り始めた。
「…君、これに覚えある?」
私が見えるように、こちらに向けられた画面には…。
【熱愛発覚!?現代の王子様と灰被り姫のお忍び愛!】
と、題された記事が表示されている。
それには画像が付いていて、私が駅まで送って貰った時の、私服で並んで歩いている姿。
「何コレ…。」
完全にデマである。
だって、あの撮影以来、リエーフとは会っていない。
「ネット上で、結構広がってるんだけど、どういう事か説明してくれない?」
月島さんは、何故か満面の笑みを浮かべている。
回答を拒否する事は出来なさそうな、どす黒いオーラを放っているように見えた。