第11章 帰宅後
今日は、時間が長かった気がする。
本当に疲れた。
早くお風呂に入って、寝たい。
そんな、ささやかな願いさえ神様は叶えてくれないようで。
辿り着いた自宅マンションの前に人影があった。
「月島さん…。」
自分の知り合いである、その人が私以外への用事で、このマンションには多分来ない。
今でも私の好きな人である事は間違いないし、無視をするのも気が引けて声を掛けた。
「君、こんな遅くまで出歩いてるの?」
「まだ、9時前ですよ。」
「一応でも、タレントが1人で出歩いて良い時間じゃないと思うケド?」
「まだ、そんなに顔も売れてないから平気です。」
口を開けば数秒で嫌味。
それが、月島さんだと分かっているけど、今日の状態では受け流せない。
疲れもあるから苛々してしまって言い返した。
「君がそう思ってても、世間は違うデショ。」
「仮に、すでに有名だとしても月島さんに迷惑は掛けてません。」
「掛けてるよ。今年のシンデレラは、うちの事務員だったって有名ダカラ。」
「それは、すみませんでした!」
これ以上、話を続けても苛々が増すだけ。
区切りを付けて部屋に戻ろうとした。
「ちょっと。僕の話、終わってないカラ。自己完結して逃げるとか、止めて貰えない?」
だけど、後ろからついて来られて。
部屋の前で言い合いはしたくないから、中へと入って貰う事にした。