第2章 オーディション
社長が、私の方を見る。
じろじろと、観察するように。
「しっかし、実物は写真以上の地味な女だな。」
「その女を何で残したんですか?」
失礼な物言いに苛立って、睨み付ける。
相手が社長だとか、関係ない。
この人、腹立つんだもん。
「おー。イイな。社長相手に反抗的ー。その度胸ありゃ、ワンデレラやれるな?」
ワンデレラ、1年シンデレラの通称である。
この言い方は、私がそれに選ばれたらしい。
何を基準にしたら、売れる要素ナシの私なんだ。
「社長。」
質問しようと口を開きかけた時に部屋に入ってきた人がいた。
「…なんで、お前はいつも1人で勝手に決めるんだ?」
私になんか目もくれず、社長に意見している。
「力ちゃーん。そんな怒んなよ。コイツ、志望動機がオモロイんだって。」
「そうやって、単純に楽しそう、だけで決めた後の尻拭いは誰がやると…。」
「それが力ちゃんの仕事だべ?」
目の前で繰り広げられる言い合い。
それは長く続かず、力ちゃんと呼ばれた人は諦めたように息を吐いて出ていった。