第10章 目覚めは最悪
誰が声を掛けた訳でもないのに、遠慮なく開かれた扉の音がする。
「外まで聞こえてるんで大声で喋るの、止めて貰っていっすか。」
来訪者は京治くんのようだ。
人が来た事もあり、タイミングを見失って起き上がれなくなってしまった。
「照島さん、スミマセン。」
「赤葦!何で謝ってんだよ!コイツ、りこを物扱いしてんだぞ!」
「…木兎さんには、よく言って聞かせますから。」
「おー。そうしてくれよ。紹介先のジムで、担当になったのが幼馴染みーって、オモシレー展開になりそーだから、期待してんだからさー。」
この言葉の後に、また扉が開く音がして、社長の声はしなくなった。
「…さて、りこさん。起きてますね?」
いつの間にか、近くなった声。
京治くん、気配ないです。
マジで怖いです。
目を開けるなんて、恐ろしくなって、逆に強く閉じた。
「反応したら、寝たフリの意味ないですよ。」
「…ふぎゃっ!」
言葉と共に鼻を摘まれて、間抜けな声を出してしまった。
ついでに、目を開けてしまった。
最悪の、お目覚めである。