第10章 目覚めは最悪
聞こえてくる話し声で、少しずつ覚醒していく。
目を薄く開けると、目に入ったのは見慣れない天井。
頭を動かして辺りを確認すると、医務室のような部屋に寝かされていた事が分かる。
段々と意識がはっきりしてきて、話し声の主が分かった。
社長と光太郎だ。
「お前さー、商品壊すのはナシだべ?」
「りこは商品じゃねーよ。」
「ウチと1年契約してるタレントを、商品っつって何が悪ィんだよ。」
「物扱いしてんのが気に食わねぇ!」
どうやら、私の事で言い争いをしているらしい。
気を失った事が原因なのは分かるけど、止める勇気は残念ながらない。
そのまま、寝たフリを続行する事にした。
「そんな事言っちゃっていーと思ってンの?折角、ここの管理士クンから是非ってオファーがあったから、大熊りこのトレーニング先に選んでやったのに?」
「んなの、知るか!」
「…へー。じゃあ、別のジムに通わせる事にするな。」
雲行きが怪しくなってきているのは、聞いているだけで感じる。
起きている事に気付かせて、一旦会話を止めた方が良いかな。
光太郎、熱くなると何やらかすか分からないし。
意を決して起き上がろうとした時、ノックの音が響いた。