第9章 トレーナーと管理士
すぐに小さくなっていく背中を呆然として見ていると、肩を叩かれる。
「俺達も行きましょうか。」
顎で先に行った光太郎と同じ道を示された。
「やっぱ、走んなきゃ駄目?」
「ウォーキングじゃなく、ランニングですから。」
「歩きなら2時間いける気するけど、走るとなると無理だよ。」
「分かってます。けど、分かってない人がいるから証明する為に走って下さい。」
気が重くて足が進まない私を急かすように背中を押してくる。
仕方なくランニングコースを走り始めた。
真後ろには、私がサボらないように見張っている京治くんがいるから、気は抜けない。
昔から運動に縁がなかった私。
案の定、数分で息が上がってきたけど止まらせてはくれないようだ。
止まったら、京治くんの自転車に轢かれてしまうくらいの距離しか開いていない。
それでも、体力には限界というものがあって、道から逸れる。
舗装されていた道から芝生に避けたら、自転車は追えない。
思った通り、京治くんは自転車を止めた。
それで安心して、私も足を止めようとしたけど。
「りこ!まだ、こんなトコ走ってたのか?お前、遅すぎねー?」
突然の背中への衝撃と、五月蝿い声と共に登場した光太郎によって、止まる、ではなく、転けた。