第8章 モデルのお仕事
灰羽さんの後ろを覗く。
ちっちゃいと言われてはいたけど、平均的な身長だと思われる男性がそこにいた。
このサイズが隠れるって、灰羽さんのサイズが規格外なだけだろう。
「モデルを何回も蹴らないで下さいよ〜。」
「リエーフが、学習しねぇのが悪い。」
「えー。俺、そんな悪い事してます?」
「してんだろ。身長ネタは止めろって何回言ったら分かんだ、この巨神兵!」
すでに怒っている、その人に挨拶すればいいのかも分からないまま、突っ立っていると目の前で始まるコントみたいなやり取り。
結局、挨拶は出来ぬまま、灰羽さんの耳を引っ張ってセットの方に戻っていった。
私の方も控え室?楽屋…って言うのかな?みたいな所に連れていかれて。
初めて、プロにメイクをして貰った。
派手な色を使わない、ナチュラルに見えるメイクだったけど、やっぱりプロは凄いもので。
地味で、目立たない顔立ちだった私ですら、それなりに見映えが良くなった。
顔を隠すように伸ばしていた前髪も上げられ、しっかり髪までセットされると案内された場所。
さっき、灰羽さんが撮影していたセットとは程遠い、わざと散らかされた部屋風のそこで、撮影が始まった。