第8章 モデルのお仕事
お披露目が終わり、自分のケア禁止!の御触れが解かれる。
でも、すぐに綺麗になる努力を開始させてくれる訳では無かった。
あの、地味な状態のままの私を使いたいという、奇特なオファーがあったからだ。
王子様と灰被り姫、をテーマにしたモデルのお仕事である。
なんと、それで1年シンデレラの特集を組むと言う、太っ腹っぷりだ。
仕方無く、手入れを諦めて、お披露目の日と対して変わらぬ見た目のまま、連れていかれたスタジオ。
中には舞踏会を思わせる、英国風?なセットがされていた。
そのセットの中で、すでに撮影は始まっている。
フラッシュの光を浴びている男性は、リアル王子様として名高い有名なモデルさんだった。
その人、灰羽リエーフさんは私に気付くと、撮影中にも関わらず、セットから抜け出して、私の元に寄ってきた。
「ちわっす、シンデレラさん。」
「ど、どーも。こんにちは。」
いきなり人懐こい笑顔で挨拶されて戸惑う。
上から下まで、じろじろと無遠慮に見てくる目から逃れたくて顔を逸らした。
「実物は思ったよりちっちゃ…。」
「リエーフ!てめぇ、撮影抜けて何やってんだ!」
「何って、挨拶してただけですよー。そんな怒んないで下さいって、いてっ!」
鈍い音が聞こえて、向き直るけど目の前にいるのは変わらず灰羽さん1人で。
誰と会話しているのか分からなかった。
「誰とお話をしてるんですか?」
「夜久さん、ちっちゃすぎて見えなかったみた…あ。」
単純な疑問をぶつけただけのつもりだったけど。
その所為で、また灰羽さんが誰かに何かをされたらしい鈍い音が聞こえた。