第39章 サプライズ
「戻って。」
私の覚悟を示すには、これしかない。
ある事をしてやろうと、強めに声を出した。
「…戻ったら、社長がうるさいから。」
「いいから、戻って!」
やんわりと断られたけど、譲る気はない。
怒鳴るに近い声で同じ事を言うと、諦めたのかUターンしてくれた。
目的地までの間、スマホで照島社長と連絡を取る。
私の予想だけど、街歩きに見せ掛けた今日の撮影の本当の目的は、力さんのプロポーズの筈だ。
社長とのやり取りで、それが当たっている事が分かった。
撮影の再開をお願いすると、あっさりと了解が返ってくる。
「…力さん、覚えてる?お披露目の撮影の時に緊張しすぎてた私に、なんて言ったか。」
思い出して貰おうと、声を掛けた。
ハンドルを握る力さんの手が強張ったのが分かる。
「…やらないで後悔するより、やって後悔した方が…。」
少しの間を空けて、その時と同じ言葉を返してくれた。
丁度良く、そのタイミングでレストランに辿り着く。
「私はシンデレラをやった事、後悔してないよ。後悔しかけた時もあったけど、今は幸せだから。あの時、逃げなくて良かったって思ってる。
今日の撮影の目的、分かっちゃったの。だから、力さんも逃げないで、最後までちゃんとやって欲しい。」
ドアを開けながら言葉を残し、待たせていた撮影班の元に向かった。