第39章 サプライズ
お互いが無言のまま、車が進んでいく。
迷ったのは嘘だったみたいで、地図を必要としている感じがしない。
初めから、私にコレを渡す為に収納を開けさせたのが分かった。
「こんな所で、目も見ずに伝える事じゃ無かったな。ごめん。」
ちゃんと答えようと、深呼吸をして声を出そうとした時、逆に声が聞こえて肩が跳ねる。
別に場所なんか関係がない。
私は嬉しいし、すぐにでもオーケーの返事がしたい。
なのに、また驚いて声は出なくなってしまった。
「でも、目を見て言う自信が無かったんだ。許して。」
そんな中でも、力さんの言葉は続いていて。
「俺が、テレビ業界の人間だからってタレントじゃないし、一々話題になる事は通常ないけど。
りこが、元シンデレラだからね。どうやっても、話題にはなる。」
私達の関係が進むにあたって、どうしても付きまとう障害を思い出させてくれた。
「…だから、断られると思った?」
なんとか返せた言葉は震えている。
私に覚悟が足りないと言われたようなものだから。
「…ごめん、りこの気持ちとかを信用してない訳じゃないんだ。ただ、りこはシンデレラ時代にネットとかで騒がれて嫌な目にも遭ってるから、静かに暮らしたいだろうと思って…。」
そして、それは肯定された。
カメラの前で、先の事を聞かれた時に答えなかった私にも一因はあるけど。
自己完結はしないで欲しい。
騒がれたりする覚悟が無いなんて、私は言ってない。
だって、力さんと付き合うなら、一生傍に居たいなら、いつかこうなるって分かっていたんだ。
今更、覚悟が決められないなんて言うつもりなんか無かった。