第39章 サプライズ
そんな顔を見ていて、話し掛ける気が起こる訳もなく、流れる景色を眺めていたけど。
「…りこ、ごめん。ちょっと道に迷ったみたいだ。地図、ソコに入ってるから出してくれる?」
力さんにしては珍しい事を言われて、指し示されたダッシュボードの収納ボックス。
頷きで返事をして、それを開けると中から転がるように小さな箱が出てきた。
私の膝の上に落ちた箱には、細いリボンが巻かれていて、完全にプレゼント仕様だ。
他の人宛の物が入っている場所を私に開けさせるかな。
そうなると、これの行き先は私って事になるけど、何も言われてないから、どうすれば良いのか分からない。
両手に収まるサイズのそれを手に乗せて、運転席の横顔と交互に眺めた。
「…りこ、ソレ、受け取って貰える?」
「え?あ、うん。有難う。…開けて、良い?」
自分の物と確認が取れると、その後の返事は待たずにリボンを解く。
箱の中には、それより一回り小さいアクセサリーなんかを入れるケースが入っていて。
その中には品物じゃなく、畳まれた紙が一枚。
真っ白なそれには、ただ一言。
‘結婚してください’
さっきのレストランでの話から、こういう先を考えてくれているのは分かっていた。
でも、こんなにすぐに、こんな形で伝えてくるとは思ってもいなかった。
笑って返事をしたいのに、驚きの方が勝ってしまって、乾いた唇を何度も開閉していた。