第39章 サプライズ
私の顔をじっと見て、喋りたくない理由を察したみたいだ。
力さんが、撮影班の方を向いて手を開いた。
そうやってストップの意志表示をしても、撮影を止める気配がなくて、苛々してきたのも見て取れる。
「こういうのは、やっぱり俺自身も嫌なんだ。どうしても、止めて貰えない?」
言葉で伝えても、カメラはこちらを向いたまま。
少し待ってみても、誰一人出ていったりすらしない。
「…りこ、行こうか。俺は、こんなものの前で言いたくない。」
こんなもの、とか言ってるけど、力さんはソレで稼いでいる身だ。
そんな言い方したら、後の仕事に響いたりしないかな。
そう思っても、力さんが何をしたかったのかは大体分かってきていたから、立ち上がる事で従う意志を見せる。
そこで慌て始める撮影班の引き止めには応じず、2人で車まで戻った。
力さんのスマホに照島社長からの着信が何回も入ったけど無視をして、車内という2人きりになる空間へ。
気まずくなったりする前に、車を走らせると思っていたのに、動かす気配がない。
力さんが、ハンドルにうつ伏せるような形になって、何だか落ち込んでいるようにも見える。
だからって、気持ちが落ち着くまでは待ってはいられなかった。
「ここに停めたままだと、社長が来ちゃうんじゃない?」
「…そうだな。」
あの社長なら、ご本人がカメラを携えてやって来てくれそうだ。
指摘をすると、顔を上げて取り敢えず的に車を出してくれる。
それでも、まだ何か落ち込んでいるような、考え込んでいるような、難しい顔をしたままだった。