第39章 サプライズ
ガチガチになっている首を動かすと、壊れた機械が鳴らすような音がする気がする。
ただ力さんの方を向くだけなのに数秒の時間を要して、やっと顔が見れた。
眼が合った瞬間に微笑まれて、気持ちが落ち着いてくる。
「…あの、どういう状況なの、コレ?」
声は簡単に口から出てきてくれた。
力さんは、申し訳なさそうに眉尻を下げて、視線を私から外す。
「今日の撮影、本当は街歩き番組じゃないんだ。」
「…え?じゃあ、何の撮影だったの?」
回答みたいで、回答になっていない言葉。
当然の疑問を返すと黙ってしまった。
しつこく聞き続ける事は出来なくて、私の方も黙ると、訪れたのは長い沈黙。
それを破ったのは、力さんの溜め息だった。
「…りこは、先の事って、どれくらい考えてる?」
私に向いてるのは、怖いくらい強くて、真剣な眼差し。
これは、多分。
私のなりたいものとか、夢とかを聞いている訳じゃない。
進路相談でもあるまいし、そんな事を聞く筈がない。
聞きたいのは、私達の関係の先を考えているか、って事だと思う。
学生の恋愛じゃないし、結婚を考えた事が無い訳じゃない。
でも、カメラとか、撮影班の居る前で、答えたいとも思わない。
口をキツく閉じて、無言を貫いていた。