第39章 サプライズ
え、何それ。
そんなの聞いてませんけど?
抗議を言葉にしようとしても、声にはならなくて口をパクパクさせるだけに終わる。
「言える訳がないだろ。無料で出演してくれなんて。」
「そこは、愛の力で何とかしろって。力ちゃんだけに。」
「却下だ。彼女を自分の仕事の都合で使ったりしたくないから。」
「別にちょっとくらい良くね?大熊りこ、旅番組系得意だったろ?」
「良くないからな?」
「じゃ、なんで連れてくんだよ。俺が使いたがるのくれぇ、分かってたんじゃね?」
私が混乱している内に、2人の言い合いが勝手に進んでいく。
このまま行くと、力さんが押され負けて、必死に謝りながら出演を依頼してくる気しかしない。
人前で、しかも仕事関係の知り合いの前で、彼女に平謝りする姿。
そんなもの晒したら、あの社長に弱味を握られてしまう。
照島社長なら、やりかねない。
「私は、別に出ても良いよ。何をすれば良いんですか?」
ここまで考えが及んだ時には、迷わず発言していた。
「…りこ、嫌なら断って良いから。もう君はタレントじゃないんだし…。」
力さんが驚いた顔で、私を止めようとしてくる。
だけど、やると決めたのだから、撤回する気は無かった。
私の出演が決まると、話はトントン拍子で進む。
何をするかの説明を受けている、その間から、すでに撮影が始まっていた事には気付いていなかった。