第38章 関係を変える嘘
その日から、私達の関係は曖昧なものじゃなくなった。
もう嘘はつかない、だとか。
連絡をする時に変な遠慮をしない、だとか。
他人行儀な喋り方は止める事、だとか。
色々と条件をつけられたけど、恋人同士なら当然の事ばかりで。
幸せな日常を送る事が出来ていた。
だから、私は忘れてしまっていた。
過去であれど、曲がりなりにも人気番組のメインを1年務めた私の顔は、それなりに人々に周知されている事。
今でも稀に、他人に話し掛けられる事がある。
勿論、悪意もなく声を掛けてくるだけの人が大半だ。
だけど、警戒心は持ち続けなきゃならなかった。
幸せボケして、それを無くしていた私は呆気なくストーカーというものがついてしまったのだ。
家もバレているようで、ポストに差出人不明の消印が無い手紙が入っていたり。
扉にプレゼントらしい品物が掛けられていたり。
相手が何処の誰かも分からず、物が贈られ続けるのは気味が悪かったけど。
今のところ、身体に被害は無い。
接触しても来ないから、こちらからアクションを起こせる訳もない。
一番身近な人が、こういう事に強いのは知っていても、相談したって、この手の嘘を吐き続けた私が信用される訳はない。
逆に怒られしまう気がして、一さんには隠し続けていた。