第38章 関係を変える嘘
頭の痛みが引いてくると、冷静になってくる。
嘘を吐いていたのにも、私なりに理由があったのだから、言い訳になってしまっても話したい。
じゃないと、会いたいと伝える事が出来なくなってしまう。
「あの、岩泉さん。私の方からも少しお話良いですか?」
「…あ?今の話蒸し返したらキレんぞ?」
雰囲気で何を言いたいかバレてしまったらしく、また眉間に皺が寄る。
それに負ける訳にはいかなくて、嘘でも危ない目に遭った顔をしないと会えないと思っていた事を話した。
宣言通り、岩泉さんはキレたのだけど。
話を蒸し返したからじゃなくて。
「いつでも連絡してこいって言ったべ?んな、くだらねぇ理由で嘘なんか吐いてんじゃねぇ!」
彼にとっては、嘘の理由が理解出来なかったからだった。
「だって、岩泉さんから連絡とかしてくれないじゃないですか!」
「だからって嘘吐いていい訳じゃねぇだろ?」
「…うっ、それは、そうですけど。」
言い返しても正論が返って言葉に詰まる。
気まずい沈黙が数分続いた後、また頭に手が乗った。
再度締め付けられるのかと思って逃げようとしたけど、それより早く髪を荒らす手のひら。
撫でられていると理解するまで数秒掛かって、間抜けにも口を半開きにしてしまう。
「…なんだよ、その顔。」
「だって、言い合いした後だから、また掴まれると思ったんですよ。」
「やられてぇのか?」
「遠慮します!」
必死に首を振って拒否をした。
それでも、頭に置かれた手は離れないどころか、未だに頭を撫でていて。
「俺も、こっちから連絡しなかったのは、悪かった。これで、この話は終わりだな?」
話を締め括るべく発された言葉と共に手が離れていった。