第38章 関係を変える嘘
脱力したみたいに、肩に寄り掛かってきている。
意味が分からなくて、目を瞬かせていると、岩泉さんがこっちを向いた。
「…俺な、商売柄なんだが、ストーカーだのの被害に遭ってる女とか、よく見るんだわ。そういう女が、どんだけ不安な思いしてっかも見てきたつもりだ。
だから、俺ん中で危なっかしい女であるお前を放って置けなかった。ホントに危ない目に遭ったのも知ってたしな。
最近のは、嘘だとちゃんと認めたから安心したんだよ。」
岩泉さんは、きっと私が最初の嘘を吐いた時から気付いてて。
でも、女がどれだけ怖い思いをするかも知っているからこそ、嘘の可能性があっても、私の事を真剣に心配だけしてくれていた。
そんな人相手に吐いていい嘘じゃなかったと、今更な反省をした。
「…ごめんなさい。本当に、ごめんなさい。」
この場を収めたいからじゃなくて、心からの謝罪。
私は、岩泉さんの心配する気持ちを踏みにじっていた。
握られていた手が離れて、私の頭に乗せられる。
「ホンットーに反省してんだな?」
許しを行動で表す為に撫でてくれるのかと期待したけど。
大きなその手は、まるでボールを掴むかのように私の頭を締め付けた。
「痛い痛い!してますっ!私が悪かったですっ!」
これ、及川徹がよくやられてるけど、こんなに痛かったのね。
いつもオーバーリアクションしてるだけだと思ってたわ。
早口で非を認めると、頭から手が離れて、やっと岩泉さんの眉間の皺が消える。
それに安心するより、痛みの残る頭蓋骨が心配で頭を押さえていた。