第38章 関係を変える嘘
…だけど、すぐに足を止める事になる。
「岩ちゃん、そんなに彼女の事が心配なら手元に置いておけば良いんじゃない?」
「アイツにだって、意思があんだろ?軽い気持ちで、俺ンとこに来いなんざ言えるか、ボゲェ!」
こんな感じで、私の事を話していたから。
恋する乙女の味方、とか言っていたけど、こんなのを求めていた訳じゃない。
話を止める為に、わざと足音を立てて中に進んだ。
2人は瞬時に口を閉じて、私の方を向く。
でも、何と言って話し掛けたら良いのか分からなかった。
喋り始める事すら出来ない、気まずい空間を割くように動いたのは及川さんで。
「お邪魔虫は退散しようかな。岩ちゃん、男は決めるトコで決めなきゃダメだよ?」
余計な一言を置いて帰ってしまった。
どうすれば良いのか分からず立ち尽くしていると、岩泉さんから手招きをされる。
「…ちょっと、こっち来いや。」
拒否を許さない命令の言葉付きだったものだから、恐る恐る近付いて隣に座った。
雰囲気が怖いから正座をして、膝の上に置いた手が握られる。
荒くやられた訳じゃないのに、ビクついてしまった。
これは、完全に嘘がバレている。
言い訳しようとすると、有ること無いこと勝手に喋ってしまいそうで、口を固く閉じた。