第7章 お披露目の日
番組の前半、今までのワンデレラの現在の活動とかの紹介があって。
私は出番までセットの裏に、縁下さんと一緒にいる。
「緊張してるよね?」
「してます。吐きそうです。」
「逃げても良いんだよ。番組で発表されたら、後戻り出来ないから。」
優しい縁下さんは、少しでも会話で気を逸らそうとしてくれているようだ。
「ただ俺は、やらないで後悔するより、やって後悔した方が…。」
『……絶対に、フった事を後悔させます!』
続いていた、縁下さんの話を遮るように聞こえたのは、まさかの私の声。
しかも、その台詞には覚えがある。
月島さんに、変わってやる宣言した時のものだ。
社長、いつの間に録ってたんだ、こんなの。
「…大熊さんの出番だ。いってらっしゃい。」
その、音声が合図だったんだろう。
縁下さんが、手の平でセットの入り口を示す。
セット裏の薄暗い世界から、ゆっくりと歩いて明るい表舞台へ。
もう、本当に戻れない状態まできた。
後は野となれ山となれ、だ。
これから1年。
自分が過ごす事になる世界を、しっかり見ようと辺りを見回した。