第36章 ドラマみたいに…(月島エンディング)
それからも、離れては重ねるだけの口付けを繰り返す。
吐息が掛かってしまうのが恥ずかしくて、息を止めていた。
「…窒息するよ。それとも、苦しいのが趣味なワケ?」
唇が離れた瞬間に間近で囁かれる。
小馬鹿にした顔をしているのは、ぼやけていても分かる。
「違います。ただ、息が掛かっちゃうの恥ずかしくて…。」
「キスって、そういうものでしょ。俳優さんとした時も、一々止めてたんだ?バカじゃないの。」
「一々って…。1回しかしてないです。
私、女優の仕事は一本も貰った事が無かったから、演技でもキスって出来なくて。避けたり、顔を逸らしたりしちゃってNG連発したから、撮り直し多かっただけなんですよ。」
至近距離で会話しているものだから、喋る度に吐息が絡んでいるのが分かる。
羞恥心で顔なんか見てられなくなって、下を向いた。
だけど、それを許さないとばかりに顎に手を添えられて上を向かされる。
「…へぇ?仕事である演技でも出来ないのに、僕のキスは避けないんだ?」
まだ気持ちがある事を確信しているみたいだ。
月島さんの顔が、とても綺麗に笑っていた。
「僕も、演技とか、からかいの気持ちくらいで、キスなんか出来ないけどね。」
続けられた台詞は、完全に告白にしか聞こえない。
なんて返せば良いのか、どんな表情をすれば良いのか、混乱して分からなくて。
音の出ない唇を何回も開閉していた。