第35章 私の騎士様(岩泉エンディング)
閉じ込められてしまった状態だ。
まだ、話があるから引き止めたのは分かるし、聞く意思を示して顔を向けた。
「…悪ィっつーの、そういう意味じゃねぇから。」
一瞬だけ目が合ったけど、すぐに逸らされる。
照れてる仕草に見えるけど、真意が分からない。
私を傷付けない言葉でも、探してくれているんだろうな。
「俺は、あのクソ川みてぇに、口は上手くねぇしよ。さっきのも、つい本心が口から出ちまって…。」
たどたどしくも、話をしてくれている。
口を挟む事は出来なくて聞いていたけど、声はそこで終わり。
片手で、ガシガシと頭を掻いていた。
「…ワリ。こういうの、慣れねぇわ。気付かねぇで、さらっとあんな返しした言い訳はしねぇ。
はっきり言わせて貰う。」
頭を掻く手が止まり、しっかりと目を合わせてくる。
真剣な顔をしていて、意を決したように息を飲み込む音が聞こえた。
「俺は、お前の事、危なっかしい女だと思ってる。だから、護ってやりたいって気持ちがある。
職業柄の使命感以外で、こんな風に思った女はお前だけだ。
多分、お前が望んだように、男として、岩泉一として、お前を護りてぇんだと思う。」
告白のように聞こえるけど、付属しているのは曖昧にする言葉。
中途半端に、生殺し状態にされるのは避けたいけど突っ込でいいか分からない。
「俺はチャラ川じゃねぇんだ。ホイホイ気軽に、好きだの、愛してるだの言えねぇ。
だが、護りてぇって気持ちは本物だ。俺と、付き合っちゃくれねぇか?」
曖昧にするのは、岩泉さんが恋に不器用だからだと分かる。
上っ面だけ整えた言葉なんかより、ずっと誠実だ。
大体、私自身も護って欲しい、ナイトになって欲しいって、恋愛感情なのか、よく分からない気持ちなんだ。
「岩泉さん。私も、男性として意識はしてますけど、まだ自信を持って好きだと言えるか分かりません。それでも、良いですか?」
「おぅ。これから、宜しくな。」
誠実さには、誠実さで返す。
岩泉さんは笑って、曖昧な私の気持ちを受け止めてくれた。
岩泉エンディング‐end.‐