第35章 私の騎士様(岩泉エンディング)
岩泉さんは、何も聞いてこない。
運転に集中していて、気付いていない事を願ったけど、それは無く。
溜め息が聞こえた。
それでもお互い無言のまま、走り続けていた車がコンビニ前の駐車場で停められる。
「…食事は嫌、帰るのも嫌。お前、何がしてぇんだ?」
暫く静かだった筈の車内に響く低い声。
「食事が…嫌な訳じゃなくて…。」
無言を許してくれない空気に負けて、震える唇を開いた。
「岩泉さん…ナイトみたいって…。私の事、いつも護ってくれるって、思ってて…。」
喋れば喋る程、追い詰められていく気がして、嗚咽が混じる。
だからって言うのを止めたら、泣いてばかりの面倒な女だと思われる。
「ちょっと…男性として、意識…してしまって。2人きりで居るの、恥ずかしくて…。」
もう、告白みたいになっても良い。
岩泉さんに、護って欲しいって。
私のナイトになって欲しいって。
そう思っているのは、事実だから。
だけど、今までは、たまたま、私が危ない目に遭う時に傍に居たから、当然の事として、助けてくれていただけ。
それで、騎士様扱いされたら困るに決まってると思ったのに…。
「…お前が、嫌じゃねぇってんなら、これからだってずっと護ってやんよ。」
聞こえてきた言葉は予想外だった。
「…有難う、御座います。」
お礼を言った後に、ふと気付く。
この人、ずっとって言わなかった?
さっきの、男性として意識してるが告白として成立するなら…。
今の返事は、そういう意味でいいんでしょうか?
状況が掴めなくなって、混乱してきて、涙は止まって。
顔に熱が集まってきた。