第34章 何より美味なもの(赤葦エンディング)
でも理解するのと、信用するのは違って。
「…京治くん、私が太ってるから何もしないとか、言ってなかった?好きな人の事、体型で判断するんでしょ。それ、信じろって言われても無理だよ。」
納得はしていない口から、否定の言葉が出ている。
「手、出して良かったんですか。」
「良くない。」
「だからですよ。あぁ言った方が安心すると思ったので。
大体、好きでもない異性を何ヵ月も部屋に滞在させるとか、俺がやると思ってます?」
「思ってない。」
私が納得する言葉を京治くんは分かっていて、やっと信用する事にした。
だけど、付き合ってくれとか言われた訳じゃないから、何を返せば良いのか分からない。
「そんなに難しい顔をしなくても大丈夫です。さっきの顔見て、勝算あるの分かって言ってますから。」
「…は?」
サラりと、人の気持ちを決め付けて京治くんが席を立ち会計を済ませている。
すぐに追い掛けて、店の外で引き止めるように腕を掴んだ。
振り返った京治くんは、勝ち誇った顔をしている。
「俺と食事するの、嫌いですか。」
「…嫌いじゃない。」
「俺の事は?」
まるで、私の気持ちを分かってるみたいだ。
こちらから言うように誘導されている。
中途半端に優しくされるのは辛いから、嫌われたい。
逆を言えば、本当に私を想って優しくしてくれるのなら、嫌われたくない。
嫌われたくないのは、この人の事が好きだから?
少なくとも、好意的な感情が向いているのは分かるけど。
それは、まだ…。
「分からない。」
自分の気持ちなのに、これが正直な答え。
京治くんは、呆れたように溜め息を吐き出した。
「それなら、アンタの味覚に直接聞きます。りこさんだけが分かる、最高に甘いデザートを用意しますよ。
俺の家、来て貰えますね?」
次の瞬間には、強制力のある満面の笑み。
拒否をする事は許されず、連れていかれた彼の家。
そこで、何より美味しいものをご馳走されて、私は彼のものになった。
赤葦エンディング‐end.‐