第34章 何より美味なもの(赤葦エンディング)
翌日、京治くんの指示通り重湯を口にしたけど、昨日みたいに美味しくも感じなくて。
料理自体は得意じゃない京治くんが、私の為にやってくれたのだと思って、無理矢理飲み込んでいた。
それからの日々も、京治くんから来るメールに従って少しずつ普通の食事に戻していく。
ちゃんと食べられるようになってきても、やっぱり一度も食事が美味しいと感じる事は無かった。
段々と、食事が辛くなってきて、もう連絡をしないで欲しいと京治くんに連絡する。
その直後、返ってきたのはメールじゃなくて、電話だった。
迷ったけど、今までの行動から考えると、無視をしたら家まで来ると思うから出る事にする。
「…はい。」
『りこさん、さっきのメールはどういう意味ですか。』
「そのままの意味だよ。なんか、ご飯食べても美味しくないし。生きるだけならサプリメントでも良いかなーって。」
こんな事を言ったら、激怒するのは分かってた。
京治くんに嫌われたかった。
だから、嫌われそうな言葉を選んだ。
様子を見に来てくれる訳でも無いし、経過を聞いてくる事もない。
ただ、私の為だと言いながら一方的なメール連絡があるだけ。
そんな、中途半端に優しくされている今の状態は辛くて。
いっそ嫌われたら、楽になれるんだって、思ったから言ったのに。
『美味い飯が食えるなら、良いんですね?今、家ですか。迎えに行きます。』
京治くんは怒りもせずに一方的に喋って、電話を切った。
1時間もしない内に、家へと現れた京治くん。
少し息が上がっていて、走ってきたのは分かる。
「一応、聞きますけど。昨日までは普通に食事しましたよね。」
「量は少なめだけど、食べたよ。」
勢いに押されて、普通に会話してしまった。
私が答えると同時くらいに、手を掴まれて外に連れ出される。
…で、辿り着いた先はまさかのファミレスだった。