第6章 宣言
ブスを理由にフラれたから、相手を見返したい。
それを答えれば良いだけなのに、本人の目の前では声が出ない。
宣言してやろう。
そう思っていたのに、出来ない。
「灰被り姫は地味なだけじゃん。着飾ったら、王子様も惚れる絶世の美女!
今年の、シンデレラは、お前だろ?」
社長の声が背中を押してくれた気がした。
「月島さん!」
思っていたより大きな声が出て。
「私、1年で綺麗になりますから!絶対に、フった事を後悔させます!」
その勢いのまま、はっきりと宣言する。
「っつーワケで、俺はこの地味女を育てるから、そこんトコ、宜しくぅ!」
何が宜しくなんだか、さっぱり分からないけど。
社長が、一緒になって宣言した事で月島さんは信じてくれる気になったようだ。
「ご勝手にドーゾ。君、恥かいても知らないカラ。」
馬鹿にした笑顔で、立ち上がる。
「君が、本当に絶世の美女になれたら、考えてあげても良いよ。」
私の横を通り過ぎた時、小さく言葉を置いて帰っていった。
取り残された、社長と私。
面白いものは見たんだから、社長も帰って頂けないものか。
「さーて、夜に部屋で2人きりの男女。ヤる事は1つ、だべ?」
私をチラりと見た顔が、笑っている。
ヤる気もないクセに、言っているのは分かる。
「いや、帰って下さい。」
「ジョーダンに決まってるじゃん。ナニ?本気にしちゃった?」
ふざけた事にノる気も起こらず、社長の背中を押して部屋の外に出した。