• テキストサイズ

【HQ】1年シンデレラ

第34章 何より美味なもの(赤葦エンディング)


テーブルの上に、どこから取り出したのかは分からないノートとペンが置かれる。

「俺の家から出てから今日まで、覚えてる限りで良いので食事の内容を書いて下さい。」

拒否を許さない強い口調で言うと、京治くんはキッチンの方に入っていった。

仕方なく、思い出しながら食事の内容を書こうとしたけど。
ここ何日かは、口に物を入れるのすら諦めて水くらいしか摂ってない。
そんなの書いたら、どれだけ怒られるんだろう。
でも、嘘を書いたらバレるのは目に見えていた。

「…書けました?」

どうしようか迷っている内に、京治くんが戻ってきてノートを覗く。
2日分程しか書いてないのを見て、大きな溜め息を吐いた。

「こんなに前の日のメニューを覚えてて、ここ1週間のメニューは思い出せないんですか?」

かなり馬鹿にしたような、冷たい視線が向いている。

「…思い出せないんじゃない。…食べてないから、書けない。」

耐えられなくて、言葉を震える唇で紡いだ。

また、溜め息が聞こえて、今度こそ完全に怒られる覚悟をする。

「…食べてない?」
「うん。」
「本当に、何も?」
「水くらいなら、飲んでた。」

思ったより強い言葉は無くて、ただ確認するような質問があっただけ。
何かを考えてるみたいに、京治くんの視線が動いていたけど、何も読めなかった。

会話の無いまま、少しの時間が経過して、キッチンの方からピーッという電子音が聞こえる。
自分の家の物だから分かるけど、炊飯器の音だ。

「少し、待っていて下さい。」

その言葉を置いて、京治くんは再びキッチンの方へと消えた。
/ 243ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp