第34章 何より美味なもの(赤葦エンディング)
光太郎も、京治くんの様子が変なのには気付いたみたいで、若干ビクついている。
「あ…えーと。俺、帰るな!じゃ、また明日!」
そのまま、逃げるようにして帰った光太郎を見送った。
「…京治くん、私達も帰ろう。今日のメニュー何?買い物しないと。」
「もう、勝手にして良いですよ。アンタがまた太ろうが、知ったこっちゃ無いんで。」
当然、私達も帰るものだと思ったけど、京治くんは動かない。
聞こえてきた声は、冷たくて、私の方を見てすらくれなかった。
「大体、3ヶ月って話でしたよね。何で、まだ俺の家に居るんですか。」
確かに、約束の期間はとうに過ぎている。
私の体型も、普通に見えるくらいにはなっている。
同居を続ける理由は、無くなっていた。
それでも、京治くんの家に居続けたのは居心地が好かったから。
「もしかして、迷惑だった?」
追い出されないから、このままで大丈夫。
そう勝手に決めて、京治くんがどう思ってたかなんて考えた事が無かった。
「迷惑です。」
即答で返事があって、甘えすぎていた事にやっと気付く。
「そっか。気付かなくて、ゴメンね?…荷物は、今度取りに行くから。今日からは、1人の家でゆっくり休んで。」
あの家は、京治くんの家。
恋人でも何でもない、ただちょっと付き合いが長いくらいの異性が入り込んでたら、自分の家なのに休まらなかったのだと思う。
本当に悪い事をしていたのだと理解して、久々に自分の家に帰った。