第34章 何より美味なもの(赤葦エンディング)
この日は家に帰らせてくれたから、一緒に暮らすのは冗談で食事の管理だけしてくれるものだと思ったのだけど。
翌日、当たり前のように私の家に来て。
「早く、荷造りして下さい。」
こんな事を言い出し。
用意をしない私に苛立って、勝手に服等々の荷物を引っ張り出して荷造りしたから、本気だったようだ。
半分以上は引き摺られて、京治くんのマンションへ。
一応、配慮はしてくれたのか、部屋を用意してくれている。
明らかに昨日まで物置にしていたっぽい、端に健康器具が寄せられた部屋だけど。
なんか、絨毯の代わりにヨガマットが敷かれている部屋だけど。
嫌なら廊下で寝ろとか言われそうだから、黙っておく事にして。
「京治くん、意外にミーハー?色んな健康器具置いてるね。」
気になった事を聞いてみる。
京治くんは、至極不愉快そうに眉を寄せた。
「…俺が、こんなものを買うとでも?」
忌々しいとでも言いたげに健康器具達を睨んでいる。
「えっ…と。じゃあ、誰が?」
「木兎さん以外に居ると思いますか?」
「あぁ。なんか、ゴメン。」
苛々している謎が一瞬で解けた。
私の幼馴染みは、通販とかを見ては買いたがるタイプで。
結局、自分では使わず、人に押し付けてくるような奴だ。
つい、口からは謝罪が出ている。
それで何故か、不機嫌度が増して、眉間に更に深い皺を刻んでいた。