第33章 恋人契約(照島エンディング)
数時間に及ぶ、タクシーの旅がやっと終わり。
下車した途端に、もう帰りたいと思っている自分がいる。
まぁ、ここから帰る交通費なんか持っている筈も無く、社長に従うしかなくて。
連れて行かれた先は、鉄板焼きのお店。
大きな鉄板の上で、目の前で肉を焼いてくれるような場所だ。
こういう所、予約無しで平気なのかな。
さっきとは違う不安が頭を過ったけど。
この社長は、意外にやり手なので、すでに予約をしていたようだ。
名前を告げただけで、カウンターのいい席に案内される。
そこで、勝手にコースの一番高いものを頼み、更には高級なワインまで開け。
本日だけで、きっと私の月給を越えるだろう散財を披露してくれた。
なんで、ここまでしてくれたのか、どうしても理解が出来なかったけど。
「じゃ、行くか。ホテルもイイトコ取ってるからさぁ。」
この一言で、すぐに解ってしまう。
この社長は、男性としての下心で動いていた。
ここまでして貰って、何もさせないのは悪いような…。
この業界では、仕事の為にそういう事をする人もいるらしいし…。
年寄りとか、とんでもない不細工が相手なら逃げるけど、社長は若いし、顔も悪くは無いし…。
何かあった時の言い訳ばかりを考える頭。
それが断る為のものじゃないのは、社長とだったら、関係しても良いと思い始めている証拠だった。