第33章 恋人契約(照島エンディング)
テレビというものは、何でも大袈裟にやるもので。
実際の生活より、もっと質素な暮らしをしているように見えるよう、部屋から家電製品が運び出され。
ベッドも、わざとスプリングが軋むような細工をされて。
完全にヤラセ、ってレベルでの撮影が始まる。
メイクも、しっかりはさせて貰えなかったから、これを放送されるのは本気で嫌だ。
それでも、折角の仕事を駄目にする事は出来ず…。
スキンケア用品も買えないから、顔は石鹸で洗っている、だの。
食事も、物価の優等生、もやしのお世話になっている、だの。
かなり酷い、貧困暮らしを世間様に広めるだろう映像になっていた。
視聴者に嘘を吐くのは心苦しいけど、それがテレビ業界なんだと無理矢理納得して。
次のスタジオ撮影の日程やらを聞いて、帰っていくロケスタッフを見送った。
「じゃ、飯でも行くか!灰被りに逆戻りしたお前に奢ってやるぜぃ。」
「結構です。」
この場に残った社長から、恩着せがましい誘いを受けて、即答で断る。
無視をするように部屋の中に戻ったけど。
「お前、肉好き?鉄板焼きのイイ店か、高級焼き肉店にでも、連れてってやろーと思ったのになぁ…。」
扉の外からの声に、反応してしまう。
だって、撮影された貧乏暮らしはやりすぎだけど、貧乏なのは間違いじゃなくて。
肉なんて、久しく食べてなかった。