第32章 解けない魔法(リエーフエンディング)
私だって、バカではないから分かる。
この封書の送り主は、リエーフのファンだろう。
女の嫉妬の怖さを思い知らされた。
まさか、リエーフの事務所の社長が週刊誌を止めなかったのは、これが狙い?
リエーフのワガママは聞いておいて、私に自滅させようとしてる?
頭の中を、暗い考えがぐるぐる回る。
そんな中、事務所内のテレビが点けられた。
映し出されたのは生放送のバラエティー番組。
ゲストとして、リエーフが出演している。
こういう、ネタがある状況でのゲスト出演なんて、カモがネギ背負って歩いているようなもの。
案の定、熱愛について聞かれていた。
リエーフの答えは…。
『だって俺、王子様っすもん。シンデレラの、王子様。』
そんな事を言いながら出した一冊の本。
実写版シンデレラの写真集。
もしかして、この本の宣伝の為に話題作りとして利用された?
そんな事が頭を掠めた。
ショックが、かなり大きい。
私が、自分のファンにこんな恐ろしい物を送りつけられたりしても、写真集を売る事の方が大切なんだ。
ちょっと、私に懐いてくれていた気がしていたけど、思い違いも良いところだ。
『俺、りこの王子様になりたいんで。その記事大歓迎っすよ。』
零れそうになった涙を止めた、テレビからの声。
滲んだ視界に、画面を映すと嘘なんか吐けない、いつでも自分に正直に生きてるリエーフの笑顔が見えた。