第31章 特別扱い(縁下エンディング)
今の仕事を始めて、数ヶ月。
やっと慣れて、お姉さんが居なくても1人で仕事をこなせるようになってきていた。
ただ、この会社は社長兼職人の田中さんと、私の2人しか社員がいないもので。
社長が現場に行くと、私は事務所に1人である。
それを問題視したのか、縁下さんがよく顔を出しに来るんだけど。
暇な訳ではないみたいだ。
来ても、ずっと自分の仕事らしい事をやっているから。
「縁下さん、自分が紹介した仕事先だからって、こんなに毎日のように来てくれなくて大丈夫ですよ。元シンデレラの皆さんに、ここまで構っていたら大変じゃないですか?」
あれ以来、私は縁下さんを意識してしまうし、私にばかり色々して貰うのは申し訳ないし。
来ないで、なんて言えはしないから遠慮する形で伝えた。
「俺が構ってるのは、現在のシンデレラと、大熊さんだけだ。…でも、迷惑なら、止めるよ。」
返ってきたのは、思ってもみなかった言葉。
現在のシンデレラが特別なのは、仕事だから当たり前。
だけど、元シンデレラでは私だけ特別だと言われたようで。
「迷惑じゃないです。その言葉…期待しても、良いですか?」
自然と、口から言葉が漏れた。
こんな事を言うのは、意識していただけじゃなくて。
気持ちはすでに先に進んでいたのだと、気付いてしまった瞬間だった。