第31章 特別扱い(縁下エンディング)
本日は、この会社の社長は現場に出てしまっているそうで。
明日、挨拶と正式な雇用契約という事になった。
縁下さんと、ビルから出るとその場でまた待たされる。
再登場した縁下さんは、車で、その助手席を勧められた。
どうやら、送ってくれるつもりらしいので、お言葉に甘える事にする。
走り出した車の中で、あの会社の社長について教えてくれた。
縁下さんの同級生で、つい最近会社を立ち上げた方らしい。
若くして会社を持ったのには理由があって…。
何でも、土方系の職人さんで、仕事仲間の小さなミスを庇ったりしている内に、重大なミスを押し付けられてクビ切りにあったそうだ。
それでも、人柄のお陰で仕事を頼まれ続け。
どこにも所属していない状態では、入れない現場もあった事から、自分で会社を興したそうだ。
ただ、会社を組織するには現場以外での仕事もある事を失念していて。
さっき居た女性、お姉さんに手伝いを頼んでいたけど、やっぱり本業として仕事をする事務員が必要になった…と、いう事だ。
そんな話をしている内に、マンションに辿り着く。
「田中、人相は悪いけど人間は良いヤツだから。怖がらず接してやって貰えると助かるな。」
車から降りて、別れ際。
わざわざフォローするって事は、相当な強面さんなんだろう。
そこは、ちょっとした不安要素でもあるけど。
「大丈夫ですよ。縁下さんから紹介して頂いたお仕事ですから、頑張りますね。」
「そう。たまには、俺も様子見に行くから。…また。」
「はい、また。」
仕事が見付かった安心感もあって、笑顔で見送った。