第31章 特別扱い(縁下エンディング)

暫く、なすがままにされていたけど、足音が聞こえてくると女性から離される。
その人と、ほぼ同時に音のする方に顔を向けると縁下さんが居た。

「力、久し振りー。何？もしかして、事務の子紹介してくれるって、この子？」
「お久し振りです、冴子さん。…はい、事務の経験はあるそうなので。」
「へー…。初見の時に思ったけど、真面目そうだもんね。ヨシ！採用！」
「田中の意見は聞かなくて良いんですか？」
「力の紹介、龍が断る訳ないじゃん。安心して、ウチに任せな。」

勝手に目の前で話が始まり、そのまま採用が決まってしまっている。

その後、事務所の中に通されて、色々な説明を受けた。
前の会社と畑違いの仕事だから、半分以上の言われた事は意味不明である。

「…大丈夫。初めてやる事にミスは付き物だから、とにかく頑張ってやってみて。」

私のやる事が仕事として成り立つか、不安になっていると、それを読み取って縁下さんから声を掛けられる。

折角、紹介してくれた仕事。
やる前から逃げていたって、他に仕事が見付かる可能性も少ない。
取り合えずでも、やってみようと決意して深く頷いた。