第29章 魔法が解ける時
最後に挨拶しに行くのは、もうお決まりの、あの2人。
光太郎と京治くんだ。
気軽な気持ちでノックをして、開かれる扉。
毎回のパターンで、光太郎が私を抱き締めようと勢いよく出てきた。
「だから、こういうの止めてって。誤解される。」
「じゃ、ゴカイじゃなくすりゃいーじゃん。俺と付き合おーぜ、りこ。」
「…は?」
光太郎の思わぬ言葉に、固まってしまう。
目が点になる、とは正にこの状態。
「木兎さん、いきなり何を言ってるんですか。」
「俺、りこのコト好きだぜ?それ、ヒョーゲンして何がワリィんだよ。
りこ、好きだ。だから、俺と付き合え。」
呆れた様子で後ろから顔を出した京治くんの突っ込み。
そんなもの、気にしていない様子で完全なる告白をされた。
しかも、命令形。
だけど、それを聞いてやらなきゃならない理由はない。
私にとって、光太郎は性別関係なく付き合ってきた友人だから、そういう風には見れない。
「ごめん。光太郎とは、付き合えない。」
「なんでだよ?」
「光太郎は友達だから、それ以上に見れないよ。」
「そっか。んじゃ、これからもダチとして、宜しくな。」
やっと働き始めた思考から導き出された答えを告げる。
フられたと言うのに、光太郎は気にしてないようだ。
本当に、私を好きなんだろうか。
疑問が浮かんだものの、これを口に出したら、告白されて気になっちゃっているみたいで嫌だ。
考えない事にして、他の方々と同じ挨拶を交わし、自分の楽屋に戻った。