第5章 タクシー
同乗者を気にする事なく、会話をしている内に私の住むマンションの前に到着。
月島さんが支払いを済ませて、先に降りた。
続いて降りた私を、楽しそうに笑いながら見下ろしている。
「君、もしかして1年シンデレラ狙ってるの?その、見た目で?」
聞こえるのは、さっきと同じく嘲るような嫌味の籠った声。
「会社辞めたのも、その為?バッカじゃないの?」
見えるのは、完全に馬鹿にした顔。
悔しいけど、ここで泣いたら駄目だ。
私は、この男を見返してやりたいんだから。
責任を感じさせたら悪いから、知られないようにしていた。
でも、知って貰わなきゃ見返すも何もない事に気付いた。
知って、これから変わっていく私を、見て貰わないといけない。
「月島さん、お時間ありますか?」
私が会社を辞める理由が、何故か気になっているようだったから、話そうと決めた。