第28章 残り時間
1年シンデレラ最終回の生放送まで、残り1週間を切った。
今日は、その打ち合わせで事務所に呼ばれている。
会議室みたいな、テーブルと椅子だけが並んだ部屋で、社長と縁下さんと3人。
失敗が出来ない生放送だからこその、入念な話し合いの筈が…。
例によって、例の如く。
「ま、お前がテンパって、トークまともに出来ねーのは予想ついてるし?特定のゲストとばっか、絡まなきゃ良いんじゃね?
…っつーワケで、注意事項は以上。」
真剣な話は向いていない社長が、一方的に言うだけで済ませて終了させた。
「まぁ、確かに大熊さんは幾つかのスキャンダル未遂を起こしたくらいで、普段の撮影は殆ど問題なかったから。
小難しく考えても、緊張しすぎて出来なくなるだろうし、今の注意事項だけ頭に入れておけば良いんじゃないかな。」
いつもなら、ここで説教をして、話し合いを続行させそうな縁下さんも、それにノってしまうなんて変だ。
何か、裏があるような気がする。
眉を寄せて、怪訝そうな顔をして見せる。
「…あのな、お前、今までのシンデレラの撮影で打ち合わせなんかした事ねぇだろ。気付けよ。」
「大熊さんと、今日はゆっくり食事でもしようと、思ったんだよ。だから、打ち合わせは建前。
もう少しで、シンデレラの魔法が解ける。うちとの、契約が切れる。他人に戻る前に、一度くらいこういう機会があっても良いだろ?」
ここに呼ばれた理由が分かると、疑った自分が恥ずかしくなった。