第26章 ご訪問
気まずい状態だけが残されて、とても鍋なんかする気分じゃない。
私も、帰れるなら帰りたい。
「なぁなぁ、鍋やんねーの?」
流石は空気を読まない代表、光太郎。
こんな時でもマイペースに発言をしてくれた。
「…あ、あぁ。取り合えず、食うか。」
澤村さんも、この状態のまま過ごすよりも良いと判断したみたいで、コンロに火を点ける。
鍋が沸くまでの時間も、食べ始めてからも、光太郎は脈絡のない話をしていた。
まるで、初めから、3人でご飯のつもりだったみたいに普通の対応で。
気まずい空気は、光太郎と酒のお陰で吹き飛んだ。
普段は食事制限の為、付き合い以外での酒を控えている私。
プライベートに近い環境で飲むのは久々すぎて、早々に酔いが回ってしまった。
その、楽しい時間は長くは続かず…。
「おい、大熊。飲み過ぎじゃないか?」
「だーいじょーぶ、ですよー。」
「いや、大丈夫じゃないだろ。部屋の鍵は?」
「ポケットに、はいってますー。」
呂律が回っているかも怪しい私を心配した澤村さんに連れられ、部屋へと強制送還される。
化粧も落とさず風呂にも入れずに眠ってしまった、この日の翌日。
二日酔いと、肌荒れと、戦う羽目になったのでした。