第26章 ご訪問
あ、これ。
ヤバい気がする。
だって、澤村さんは、頼れる懐が広い上司だけど。
納得が出来ない事に関しては厳しいと有名な人だった。
一度は、同席すると部屋まで来た月島さんが帰った理由が、私達が何かをしたと思っているなら、この先は…。
「お前等、月島に、何したの?」
予想していた通り、鍋を簡易のコンロに置いた澤村さんから、低い声が聞こえる。
「い、いや!俺等は何もしてねーよ!な、りこ?
赤葦が、ケンカ売ってただけで!」
「…木兎さん、俺を売らないで下さい。」
「売ってねーって!ホントのコト言ってるだけだ!」
「俺は、別に喧嘩を売った訳じゃないです。ただ、事実を確認していただけで。」
焦った光太郎が、あっさりと何があったか話し。
京治くんは責任逃れをしようとしている。
「…大熊、どうなんだ?」
「京治くんが、喧嘩を売っていたようにしか見えませんでした。」
2人の話を聞いていても、どちらを信じれば良いか分からないみたいで。
私に確認をしてきたから、思っていたまま答えた。
「…俺も、帰りますね。空気を悪くして、すみません。」
分が悪いと判断した京治くんが、頭を下げて立ち上がる。
「おぅ!帰れ帰れ!」
「ちょっと!光太郎!それは流石に酷いから!」
「そうだぞ、木兎。赤葦は、誰彼構わず噛み付くタイプじゃないだろう?何か、理由が…。」
追い討ちを掛ける光太郎を、澤村さんと宥めて引き止めようとしたけど。
「いえ、大丈夫です。俺が、噛み付いたのに間違いないので。頭を冷やしたいので、失礼します。」
結局、自分が一番悪いと分かっている京治くんは、帰ってしまった。