第27章 今度は選ぶ側
最終回まで、残り1ヶ月を切った頃。
私の仕事は激減している。
リエーフの事務所の圧力でモデルの仕事以外からも干されたとかではない。
1年シンデレラの特性上、仕方のない事だ。
収録が終わっている番組でも、私が最終回で芸能界に残らない選択をした場合…。
それが、放映出来ない事になるから。
だからって、今はまだタレントである私が外に出ると、有名税とやらで大変な目に遭う。
仕事も無く暇な毎日をダラダラと部屋で過ごしていた時。
インターフォンの音が鳴った。
あまり、良い予感はしないけど、知らない人だったら澤村さんなり、光太郎なりを呼べばいい訳で。
玄関のスコープから外を覗いた。
見えたのは、社長と縁下さん。
安心して、扉を開けると…。
「大熊りこ!うぇーい!」
相変わらずのテンションの高さで挨拶にならない言葉を発し、ズカズカと部屋の中に入ってくる社長。
「突然来て、悪かったね。今、大丈夫?」
「大丈夫じゃなくても、社長があの調子だと、付き合わなきゃ駄目ですよね。」
「…正解。扱い方、分かってきたみたいだな。」
玄関に残った縁下さんと、ちょっとだけ会話をしてから、部屋へと戻った。