第26章 ご訪問

でも、それだけで鋭い京治くんは気付いたみたいだ。
明らかに、私を呆れた目で見ている。

「りこさん、身の程は弁えた方が良いですよ。貴女に合った方が、絶対…いえ、きっと…多分、居ますから。」

しかも、その口から出てきた言葉は、かなり酷かった。
絶対って確定していた言葉から、わざわざ曖昧な言葉に変更する意味はあったの？

「合う、合わないって、周りが決める事デスカ。」

私に向けられた筈の言葉に反応をしたのは何故か月島さんだった。

「そりゃ、本人達がお互いにそう思えるなら、不釣り合いだと周りが言っても無意味だけど、ね。…見た目だけで、りこさんを傷付けたんだよね？」

返す京治くんの顔が、今度は怒っているのが分かる。

「…それは…。」
「俺、告白って勇気がいる事だと思うよ。女性からする場合は、特に。
それをしたりこさんを、見た目だけを理由にフった人が、よくそんな事を言えたね？一緒に居るの、恥ずかしいとか思ったんでしょう？」

言い訳らしい事をしようとしていた月島さんの声を遮り、淡々と京治くんが説教を始めた。

いや、酷い事を言ったアンタが説教ってオカシイでしょ。
…と、思いはしたものの、京治くんが怖すぎて声には出来ない。

やっと、説教らしきものが止まったのは、澤村さんが鍋を持って登場したから。

「…僕、やっぱり帰らせて貰いますね。」
「おい。月島？」
「お疲れ様デース。」

澤村さんの横を抜けて、引き止めようとする言葉すら聞かず、月島さんが出ていった。