第26章 ご訪問
どうやら、光太郎がこのマンションに引っ越してきて以来、澤村さんとは頻繁に食事したり、飲んだりしているそうだ。
今日も、その予定だったみたいで、京治くんも連れて来たのには訳があって。
‘大熊りこを守る会’
…を、結成する予定だったらしい。
もうシンデレラも終盤だし、今更作られても困る。
しかも、そのまま過ぎてネーミングセンスを疑う。
それは、同じく話を聞いていた月島さんも思ったみたいで。
「…ダサっ!」
一言だけ発して、お腹を押さえながら笑っている。
「なっ!シツレーだぞ!」
「それは、すみませっ…ククッ!」
「そこまで、笑う事はないんじゃ…。」
機嫌を損ねた光太郎が抗議して、謝ってはいるものの月島さんの笑いが収まる事はなく。
このままだと、面倒臭いしょぼくれモードに突入しそうだったから、止めに入る。
それでも、笑いを収めてはくれず、どうすれば良いか分からない。
「…りこさん、そういえば、そちらの彼は?」
「…え?あ、あぁ…。」
困っていると、話を逸らすように京治くんから声が掛かった。
なんとなく、今回のシンデレラに応募したきっかけの男、とは言い出し辛い。
「会社勤めしていた時の、パートナーだった営業さんだよ。私、営業事務やってたから。」
取り合えず、表面上の関係だけを答えておいた。