第26章 ご訪問
黙り込んだ私を見て、月島さんが溜め息を吐いている。
その音だけで、呆れられているのが分かって、更に何も言えなくなった。
どちらも喋らないまま、時間だけが過ぎていく。
そこへ、聞こえてきた足音。
「やっぱ、鍋っつったら肉だろ!」
「…お前、まさか肉ばっか買ってきたんじゃないだろうな?」
「お察しの通り、肉ばかりにしようとしたので流石に止めましたよ。」
同じ方向から、声まで聞こえてきた。
それは、月島さんにも聞こえたようで、殆ど同時にそちらを向く。
「おぉ!りこ、ちょーどいートコに居たな。これから、澤村ん家で鍋だ!お前も来るだろ?」
「あぁ、月島も居たのか。良かったら、お前もどうだ?」
そこに居たのは、私の隣人である澤村さんと、このマンションの住人である光太郎。
あと、光太郎に強引に連れて来られたであろう京治くんだった。
私達を見るなり、お誘いの言葉を掛けてくる。
月島さんと2人で、気まずい状態を続けるよりは遥かにマシで。
「澤村さんが良ければ、お邪魔します。」
「いいに決まってるだろう?」
使われる部屋の主に許可を求める形で、お誘いを受けた。
「月島は、どうするんだ?」
「…僕も、お邪魔します。」
きっと、光太郎みたいなタイプが苦手で、断るだろうと思っていた月島さんまで来るのは予想外だったけど、人前でさっきの話の続きなんかしないだろう。
招かれるまま、開かれた扉を抜けて、澤村さんの部屋に入った。