第26章 ご訪問
リエーフが、ブログにあんなものを載せたから、ある程度は予想していた。
だけど、前の家からは引っ越しているし、連絡先も知らないから安心はしていた。
なのに、なんで、この人が此処にいるんだろう。
「…君さ、前に言った事、もう忘れちゃったの?」
嫌味な笑顔を浮かべた月島さんが、自宅の前に立っている。
どうやって、現在の住所を知ったのか教えて貰いたいところである。
考えていたところで、怒り顔が恐ろしすぎて、そんなの言えない。
「いや、あの。アレは、リエーフが強引だったから仕方無く…。」
「へぇ…。仕方無くで、手料理とか振る舞うんだ?」
まるで、浮気がバレた時のような見事な慌てっぷりを披露して、言い訳をしているけど。
私と、この男の関係は、フった男とフラれた女。
どうして、こんなやり取りをしなきゃならないんだ。
もしかして…。
「…月島さん、嫉妬してます?」
「…は?君、頭悪いの?」
つい、漏れた心の声。
都合の良い事を考えていたのは分かっている。
その証拠に、目の前に居る月島さんの顔が明らかに不愉快そうに歪んだ。
「君、僕を見返す為に今の活動してるんデショ。他の男と噂になったら立場悪いって、分からないの?」
言われた事が、突き刺さってくる。
確かに、モデルやアイドルと噂になると、そのファン以外にも叩かれていた。
過激なのは、及川徹のファンが多かっただけで、他からもファンレター名目で苦情を綴った手紙が送られてきた事はある。
理由は、多分だけど月島さんの言う通りだ。
初回の放送時点で、自分をブスだとフった男を見返す目標を掲げていた。
そんな私が、他の男に色目を使っているなんて、視聴者からしたら、軽く見えて当然。
今更気付いた現実が、とても痛いもので、言い返せなくなった。