第25章 好きな仕事
タレントとしての活動の中で、得意不得意は勿論ある。
私の場合、一般人と会話して回るのがメインになる旅番組は得意で。
芸人さんが司会をやってるトーク番組は、笑いを取る為に突拍子もない事をやられて反応の仕方に迷うから不得意だ。
それとは別に、好き嫌いもある訳で。
本日は好きな方に分類しているお仕事だ。
それは、雑誌のモデル。
指示された表情を作ったり、ポージングも満足に出来ないから不得意分野なんだけど。
やっぱり、女としては綺麗な洋服は大好きだし。
私の活動の特性上、女性が子どもの頃に一度は憧れたであろうドレスを、色々な種類着せて貰える。
そりゃ一人で着れる代物じゃないから当たり前だけど、着替えも周りがやってくれる扱いまでお姫様仕様。
更に、喋る必要がないから、反応に困ったり、考え込んだりしなくていい。
その上、インタビュー的なものがあっても、文字として載るから、私が慌てたりする光景は表に出ない。
そこが、テレビに映る番組と違って気楽なのもあるから、この仕事は本当に好き。
今回は、初期に撮影した灰被りだった頃とのビフォーアフター的なもので、王子様役のリエーフも来ている。
比べる為にやっているから、前回と同じ衣装に同じセット。
全てがほぼ一緒で、現在はガラスの靴を持ったリエーフが私の足元に座っていた。
ただ、何でもかんでも同じという訳でもなく…。
今回は、私の顔もしっかり写すように前からも撮られている。
顔が写らないなら、前と同じくリエーフだけを見れいれば良かったのだろうけど、そうもいかず。
だからってカメラ目線も変な気がして、視線がキョロキョロと動く。
「りこは俺を見てればいーんだよ。」
ちょっと低めの、はっきりとした声がした足元。
そちらに目を向けると、何かを合図するようにウィンクをしてくるリエーフ。
何の合図をしたかったのかは分からないけど、この時の表情とか構図が良かったようで。
数回のシャッターの音が聞こえて、撮影が終了となった。