第24章 代理
私に合わせて、岩泉さんの歩みもゆっくりになる。
会話の内容は、私の知らない…岩泉さんの仕事の事ばかりだったけど。
本当に仕事や、職場の人達が好きなのが伝わってきた。
それと、一つ発見した事もある。
岩泉さんは、照れたりすると顔を若干逸らして舌打ちする癖があるみたいだ。
話に出てくる、後輩さんの事とかを私が褒める度に、それをやるから多分間違いない。
少しだけど、岩泉さんの事を知れて嬉しくなっていた。
話をしている内に辿り着いたマンションの前。
「今日は、わざわざ有難う御座いました。」
「おぅ。気ィ付けて帰れよ。」
「もうエレベーター上がるだけですよ。」
「…だな。じゃ。」
「はい。お休みなさい。後輩さんにも、宜しくお伝え下さいね。」
入り口の前で頭を下げて、本日最後の会話。
また、照れた時の癖を見たくてわざと言ってみた言葉。
「…お休み。」
思った通り、顔を逸らして舌打ちしていたけど、それは照れたというより機嫌が悪いみたいに見えた。
でも、気の所為と思い込む事にして見送り、自分も部屋へと戻る。
一人になった途端に思い出すのは、自分の未来についての悩み。
雑談している時は、思い出さなかったのに。
楽しい時は、嫌な事を本当に忘れられるのだと実感した。
考えても、シンデレラ最終回には答えが強制的に出る。
それなら、考え込んでパンクしそうな事にならないように、今は楽しい事に全力で生きてみようと思った。