第24章 代理
自宅に向けて、ただ歩き続けている。
もう少しで家だって分かっているのに、この気まずさの所為で道が果てしなく長く見えた。
マンションが見えてきた頃、隣から聞こえてきたのは溜め息。
「…あー…。悪かった。あの、クソ川を思い出しちまってよ。」
「あ、いえ。元はと言えば、私が笑ったのが悪いので…。」
ばつが悪そうに頭を掻く姿が目に入る。
手を振って、気にしないで、を示した。
「そんなに、及川徹に似た行動でした?」
自分では、そうは思えない。
あのチャラい感じに似ている部分があるとしたら、直したくて聞いてみた。
「…や、別に似てねぇよ。」
「じゃあ、何で思い出したんですか?」
「前にな、俺がソレ持ってんの見て笑いやがったんだよ。」
否定されたけど納得出来なくて、質問を重ねるとキャラメルの箱を視線で示される。
つられたように、それに目を向けた。
「あぁ、成程。だって、やっぱり意外ですから。」
「俺の好みじゃねぇっつってるべ?」
「誰の好みなんですか?」
何故か、普通に会話が出来るような気がしてくる。
だから思い切って、疑問を口から出した。
「職場の後輩だな。上手くサボんの得意でよ。ソレやっから、仕事しろって物で釣ってんだよ。」
「可愛い後輩なんですね。」
「俺よりデカイ男が可愛い訳ねぇだろ。」
「でも、岩泉さんが可愛がってます。本当に可愛くなかったら、そうやって構わないでしょう?」
会話が成り立ち始めると、早く帰りたい気持ちは無くなって。
もう少し、話をしていられるように歩みを遅くした。