第24章 代理
考えてみれば、夕方を越えた時間帯に一人で外に居るのは久し振りの事。
気を付ければ大丈夫、と自分に言い聞かせて歩いていた。
周りを注意するように、キョロキョロしているから挙動不審だとは思うけど、注意しないよりはマシ。
その所為で、子ども並みのミスをするなんて思ってもいなかった。
「…オイ!危ねぇぞ!」
突然、聞こえた声と、掴まれる腕。
覚えがある声だったから、悲鳴はあげずに済んだ。
そして、その直後に目の前を車が横切る。
横断歩道を渡ろうとしていたのに、何で。
もしかして、また狙われた?
恐怖心で、体が震えそうになったけど、それは頭に走った痛みですぐに止まった。
「…いっ!」
「痛くしてんだ。テメェ、信号見るくらいしろや。」
私を殴ったであろう拳を見せつけながら、声の主…岩泉さんが顎で信号を示した。
色は、赤である。
しかも、よくよく見たら、歩道の脇には赤いスイッチが付いた、夜間押ボタン式の黄色い箱が設置されていた。
人の気配にばかり注意して、普通の交通事故を起こす所だった。
「…ごめんなさい。」
明らかに私のミス。
怒られて当たり前の状況。
それでも、謝罪をした事で許してくれたのか少しだけ眉間の皺が緩んだように見えた。